いよいよ貸店舗を借りる申込み!家賃保証会社を利用せずに契約はできる?できない?

ここで出店しよう!
と貸店舗を借りることを決断し、不動産会社の人に伝えると
「こちらへご記入して下さい。」
と管理会社指定の『入居申込書』と一緒に、家賃債務保証会社の『利用申込書』を渡されました。
※家賃債務保証業者(会社)を略して、業界では「保証会社」と呼んでいます。

保証会社の利用かぁ・・・。
賃貸借契約と言えば、借主と連帯保証人が必要なイメージだけど・・・。
連帯保証人ではなく、保証会社を利用するってことなのか・・・。

利用は必須なんだろうか?
なぜ保証会社が必要なんだろう?
連帯保証人じゃダメなのか?

こんな疑問を持ったあなたに、賃貸借契約時に利用をすすめられる保証会社についてご説明します。

Contents

答えを先に言っちゃいます

保証会社を利用せずに貸店舗の契約ができるかどうか?

答えは『NO』です
利用せずに借りるのは、ほぼ無理でしょう。

以前は連帯保証人を立てられればOKでした。
しかし

経済の不安定化

 ⇒大手といえども先行き不透明な時代。払ってもらえない時は突然やってくる。

民法の改正による連帯保証人の責任負担の減少

 ⇒何かあっても全額保証してもらえない。

家賃保証会社の登録制度の普及

 ⇒保証会社への不安や不信感が払しょく!

これら情勢の変化や制度の改革によって、連帯保証人よりも保証会社の方が安定した家賃収入を得られるという方向に業界の考え方が変化しました。

連帯保証人の場合、いざ滞納などが発生した時は、借主や連帯保証人へ請求する手間が発生します。
しかし保証会社なら、プランによっては貸主や管理会社が請求せずとも、保証会社の方で借主へ請求してくれます。
貸主や管理会社にかかる請求の手間、時間、人件費など一切かからず、毎月しっかり家賃が得られるのなら、その方が助かります。

また民法の改正により、連帯保証人を立てて契約する場合、今までと同じ方法では契約できなくなりました。
連帯保証人を立てる場合、より手間をかけて契約する必要があります。

さらに、家賃保証会社の登録制度により信頼度が増し、貸主や管理会社が今まで持っていた不信感が和らぎ、利用することへの抵抗が非常に少なくなりました。

以上のことから『保証会社を利用せずに貸店舗の契約ができるかどうか』についての答えは『NO』だと思います。

今回のテーマの答えがもうわかってしまいましたね。

以降は、今さっとお伝えした理由を細かく説明していきます。
細かい話はOKという方は、以下は読み飛ばして頂いて構いません。
さらにお知りになりたい方は、ぜひ続きもお読みください。

そもそも連帯保証人の役割って

まず、不動産業界で今まで認識されていた連帯保証人とは。

連帯保証人は、借主が賃貸借契約上に発生する責任を連帯して負う人です。
家賃や管理費から、故意過失による建物への損害までです。
そしてその連帯保証人には、責任を負う上限はありません

借主の家賃の未払い・滞納、借主が建物やお部屋に損害を生じさせた時などに、貸主は借主と同じように連帯保証人にも生じた損害額を請求できます。
連帯保証人は賃貸した場所を使用していなくとも、借主が起こした損害をどこまでも賃貸借契約が継続する限り保証する立場なのです。

よって基本的に、連帯保証人は借主以上に安定した高収入がある方になって頂くのが一般的。

連帯保証人を引き受けるということは、収入があることが前提の上、借主との深い信頼関係はもちろんのこと、何があったも面倒をみるよという相当な覚悟も必要ということになります。

そういった立場の連帯保証人という存在があるおかげで、今まで不動産業界では連帯保証人を重要視した契約を行っていました。

でも現実はどうだったかというと・・・。
現実は、みなさん誰もが高収入の連帯保証人を立てることは難しい。
しかし、貸す側は連帯保証人を立てなければ契約を認めてくれない。

そこで、年金生活のご両親や、関係の薄い友人・知人などが連帯保証人となり、それを認める契約が増えました。

おかげで保証できるほどの収入がなかったり、関係が薄かったため契約の更新の頃には縁が切れて連絡が取れなかったりと、連帯保証人の役割がほとんど機能していない契約が全体の何割かを占めるようになっていきました。

民法改正による連帯保証人の責任負担の減少

そのように賃貸借契約の事情が変化しつつある中、世の中は経済の不安定化や不況等々により、家賃の未払いが多く発生。
借主だけでなく、連帯保証人へ請求する自体も増えた可能性があります。

一部には不動産会社からの悪質な家賃取り立てなどもあったかもしれません。
支払いに悩む借主、そして連帯保証人・・・。
賃貸借契約上の金銭損害トラブルが数多く生じ、同時に窓口への相談件数も年々増加したものと思われます。

こういった経緯が背景にあり、それが強く働いたせいなのかもしれません。
消費者保護の観点と、賃貸部分を使用している当事者ではない連帯保証人を守るべくということでしょう、2020年4月に民法が改正されました。

連帯保証人が負う『極度額』(きょくどがく)=『責任を負う上限の金額』を定めるようにと決まったのです。

この契約上で何かあった時に連帯保証人が保証しなければならない最大の額を決めるということです。

貸主側の視点で見ると、借主に支払ってもらえないからと連帯保証人に請求しても、極度額の設定により上限を決められてしまったため、上限を超える損害額は回収することができないということになるわけです。

今までの制度であれば、損害額全てを請求することができました。
しかし今回の改正が行われた事により、いざ何かあった時、貸主はどうしたらいいのでしょう・・・。
消費者保護とはいえ、賃貸物件の所有者は損害を自己負担するしかないのでしょうか・・・。

借主はほぼ個人ですが、実際のところ貸主の中でも民間賃貸住宅の8割以上は個人経営と言われています。
(国土交通省HP(社会子孫整備審議会民間賃貸住宅部会「最終とりまとめ」より)

個人対個人ですが、法的に守られているのは借主側のみ・・・?

『極度額』により連帯保証人は責任の負担が軽くなった点は、連帯保証人を頼みやすいというメリットになります。
しかし、連帯保証人の責任が軽くなったことにより、連帯保証人の重要性が薄らいでしまい、連帯保証人の存在自体を考えさせられる事態へと状況が一変しました。

今回の民法改正は借主側を考えての改革だったと思います。
ところがこの改正は今までとは違い、賃貸業界における不動のルール、何十年も続いた契約形態を大変化させるキッカケを与えたのです。
『連帯保証人の存在は賃貸借契約において必要か否か』という大きな課題を提起してしまいました。

家賃保証会社の登録制度の普及

家賃債務保証業者、略して保証会社に対し、国土交通省は2017年家賃債務保証業者の登録制度を創設しました。

登録制度の創設は、『保証会社の業務の適正な運営を確保し、賃借人の利益の保護、を図るとともに、家賃債務保証業の健全な発達に寄与することを目的としている』と言われています。

登録せずとも保証会社を運営することはできますが、依頼する側である貸主や管理会社からの信用度は全く違います。

今まで普及しなかった理由は、どこまで信頼できるのか未知数だったからです。
保証料を支払って保証を依頼しているにもかかわらず、数年後に保証会社と連絡がつかない、または倒産していたなどでは話になりません。
どこまで保証会社をあてにいていいのか不明だったため、連帯保証人を最重要視していたのです。

登録番号を持っている保証会社なら安全だとか、倒産しない、というものではありません。
とはいえ、設立して数年という保証会社は、『どこの馬の骨』ともわからない存在であり、やはり不安です。
ですので、国土交通大臣の登録を受け、登録番号を取得している保証会社は、信用する材料として絶対的に有利に働きます。

貸主や管理会社が信用できる基準、登録制度が設けられ、保証会社の制度が整ったことは、しっかり保証してもらいたいと考える貸主や管理会社にとって有益な情報となりました。

連帯保証人の責任範囲の減少とはウラハラに、保証会社の信用度は大幅にUPし、それまで抵抗していた保証会社利用の壁が取り払われました。

連帯保証人を立てた賃貸借契約よりも、家賃保証会社を利用しての賃貸借契約の方が、金銭的部分をしっかり保証してくれて安心、という方向に貸主含め業界全体考え方が一新。

保証会社を利用した方が、毎月きちんと振り込まれる家賃の入金が確約される安心感が得られます。
連帯保証人という個人の総合的な保証よりも、『家賃がしっかり毎月入る方が重要!』

今まで超重要事項と考えられていた連帯保証人と、どこまで信頼していいのやらという新興企業的存在の保証会社との立場が形勢逆転!
なんと、優先順位が入れ替わってしまうことになったのです。

連帯保証人を立てずとも、保証会社を利用してくれればOKと、賃貸借契約の契約条件が変化しました。
これは何十年と同じ方法を取り続けてきていた賃貸業界にとって、ものすごい大変化だと思います!

保証会社の利用回避はかなり厳しい・・・

民法の改正についてさらに具体的にお話します。

実は、改正内容は『連帯保証人の極度額を定める=保証する最大額を決める』だけではありません。

連帯保証人を依頼する場合、極度額を定めることはもちろんですが、それ以外に、

◎借主の財産及び収支の状況
◎借主が主債務以外に負担している債務の有無、ならびにその額および履行状況
◎借主が主債務について貸主に担保を提供していない事実

などについて、借主は連帯保証人に情報提供を行わなければなりません。

依頼して署名をもらえばOK、というやり方ではダメなのです。

それに引き換え、保証会社は申込書を記載し、審査が通ったら、保証料を支払い保証会社の契約書にサインすればOK。
これだけの手順で賃貸借契約が交わせます。
身近な人へ借主自身の財務情報を提供し、信頼を得て連帯保証人になってもらうよりスムーズです。

保証会社を利用したら、あとは滞納をしないように気を付けるだけ。
これは連帯保証人を立てた場合でも同じ注意事項ですが。

保証会社は、貸主にとっても、借主にとってもある意味便利な方法。

よって『保証会社は必ず利用。その上でさらに連帯保証人を立てるかどうかを検討する。』ということはあるかもしれませんですが『保証会社を利用せず、連帯保証人を立てて貸店舗の契約をする。』ということは、ほとんどないだろうと思います。

そして、今後おそらく、連帯保証人を立てたら保証会社は利用しなくてOK!という契約には戻ることはないでしょう。

一部の不動産会社は連帯保証人での契約を継続しているかもしれません。
ただし業界全体としては、保証会社の利用が”必須”で、これが主流となっています。

以上のことから、『保証会社を利用せずに契約できないかと』不動産会社へ交渉しても、期待する答えは得られないと思います。
時代の流れとして受け入れ、追加として必要になる保証料の確保に時間や労力を費やした方が得策ではないでしょうか。

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