商売の内容を変更したくなった。今の契約のまま業態変更はできる?何か方法はないだろうか。

契約開始して数年数ヶ月経ち、頑張ったけど、どうにも今の商売が思ったように展開しない。
売上が伸び悩んでいる。
予定ではもう少しイケるはずだった。

と、始めた商売が予想通りに売り上げが伸びず、毎月ギリギリの状態・・・。

「あ、そうだ!ここはもともと貸店舗としてテナント募集をしていたんだ!よし、商売の内容を変更してリニューアルオープンしよう!

と思い切って、商売の内容を変更して出直してみよう!とひらめくことがあるかもしれません。

果たしてそれは可能なのでしょうか。
今回は、賃貸借契約期間中に商売の内容を変更することは可能なのかについて、考えてみましょう。

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今の商売が軌道に乗らない・・・そうだ業態変更だ!

ここで仮のストーリーを少々

貸店舗を借りる時に、スタジオ兼オフィスとして賃貸借契約を結んだ。
この場所はもともと店舗として募集されていて、以前は店舗として営業していた。
それが閉店してテナント募集が出ていて、そこに、あなたは借り手として手を挙げた。

店舗内は全て撤去され、解体後だったのでスケルトン状態。
商売は撮影スタジオ兼オフィスで、メインは撮影なので、コンクリートむき出しの状態でもOK。
少し手を加えるだけでいけそうなので、引き渡しの状態がスケルトンでも、大きな工事費をかける予定もないし問題はなかった。

さてビジネスをスタートしてみると、期待以上に予約は入らないし仕事の依頼も増えない。
当たり前のことだが、毎月家賃やら諸々の支払いは発生する。
それなりに工夫し、できる限りの営業努力をしたけど、今後の見通しが見えない。

この状態を切り抜ける方法はないだろうか・・・。
これ以上集客の見込みはないし、新規顧客の開拓も難しい・・・。

そうだ!今の商売を見直そう!
もともとここは店舗をしていたし、立地としても集客力がある場所。
ちゃんと内装を施して店構えを整えればお客さんが入ってくる可能性がある。
そこであなたは新しい商売のプランを立て、内装工事業者と打ち合わせを始めた・・・。

即行動は危険!まずは契約書の確認を

撮影スタジオ兼オフィスとして借りた。
もともと店舗として貸しているなら、店舗としても使えるはず。
よし、業態変更してみよう!

よく気が付きましたね、と言いたいところですが、ストップ!
思い立ったが吉日と即行動してはいけません。

勇み足で業態変更し、再オープンして営業をしていたら非常に危険です。
大家さんや管理会社がその事実を知った途端、契約違反として営業の即停止を求められるか、場合によっては契約解除の話まで出てしまうかもしれません。

商売の内容を変更しようとする前に、まず、賃貸借契約書の契約内容を確認してみましょう。
そこに『使用目的』は『撮影スタジオ兼オフィスとして使用』と記載されていませんか?

契約書に『使用目的』の記載がないからといって、借りたスペースを全てあなたの自由に使えるということにはなりません。
業態についても同様で、自由に変更していいというものではありません。

どんなお店でどんな風に営業するか、業種業態を明確にして申し込みした結果、「その業種業態ならOK、あなたに貸します。」と審査が通っています。

その申込時の商売の内容を変更してしまったら、あなたのその商売なら貸しますと出店の許可をもらい契約したのに、その契約をあなたが自ら破ってしまうことになってしまいます。

業種によって賃貸条件が変わる場合もある

確かに過去に店舗として貸し出されていたことがあるかもしれません。
しかしそれは過去のこと。

あなたが貸店舗のテナント募集を見た時、背景には、配管の劣化など設備上の不安が判明し、今後はオフィスや物販店などに貸す程度にしようと、貸し方を見直して募集内容を変更していた可能性があるかもしれません。
もしそうだった場合、設備上の不安が原因なので、その改善を図れない限り、業態変更は難しいでしょう。

またそういった設備上の不安がない場合で、店舗として使用できる物件でも注意が必要です。
業種業態によって、賃貸条件を変更して募集している場合があります。

たとえば、オフィスやサービス・物販業なら家賃は250,000円、飲食店なら300,000円など、業種業態によって賃料を変更して貸す場合があるのです。

さらに、建物への負担が大きい業態の店舗が入居する場合、定期的に行う排水管洗浄などのメンテナンス代などの負担分として、別途メンテナンス費用が発生したり、それを含めて管理費がUPする可能性もあります。

また、ガス・水道・電気代などの公共料金なども上がる可能性があります。
東京ガスや水道局と直接契約ではなく、貸主や管理会社からの請求となっている場合、業態によって使用量が少ないと見込んで飲食店などよりも低額に設定されていたりもします。

オフィスや物販店が飲食店に変更になれば、全ての公共料金の使用量がグン!と上がります。
美容室などであれば、ガスや水道の使用量が同じくグン!とUPするでしょう。
なので業態が変わると、請求する公共料金も変わり、そちらの変更も生じます。

業態変更をしたいなら

今の賃貸借契約のまま、業態を変更することは非常にハードルが高いものと思います。
前述の通り、建物の設備上の不安などがある場合、変更はほぼ不可能でしょう。

そういった問題がない場合でも、あなたの好きなタイミングで自由に変更する事は絶対にしてはいけません。

どうしても今借りているその場所・店舗で業態を変更したいと思ったら、行動する前に、まず管理会社に相談してみることをおすすめします。

業態変更OKの場合

管理会社の方が様々な事情をふまえて、業態変更が可能かどうかを検討し、大家さんに相談してくれます。
そして業態変更が可能となった場合、いつからどのように変更が行われたか、契約書上の変更内容として控えてくれます。
そしてあなたがいずれ退去する時の敷金精算でトラブルにならないよう対応してくれます。

希望すれば、契約書を作成し、契約書のどの部分をどのように、いつから変更し、いくらになったと形にしてくれます。

その際に手続きの為の費用が発生するかもしれませんが、管理会社が作成してくれた書類があれば、言った言わないのトラブルが避けられます。
手続きの費用を惜しまず依頼した方がいいでしょう。

惜しんだせいで敷金精算が進まず、保証金がなかなか返金されないなど、トラブルに悩まされることのないように、何かあった時の記録は有効な形で残すことをおすすめします。

業態変更が不可の場合

今の商売を継続するか、解約するかを検討する必要があります。
もちろん、賃貸借契約期間が残っていれば、それまで今の業態で営業を続けることは可能です。

一度解約して、新規契約で再スタート

ところで、業態変更がOKであっても、現在の契約そのままでは難しい場合があります。
そういう場合、現在の契約を一旦終了して、業態変更した商売で新規契約を結ぶのです。

「え!新規契約になるの?」と思うかもしれません。

しかし現在借りている物件の立地を考慮し、業態変更すればやっていけると思えたのなら、その場所を動かず業態変更した方が良いでしょう。
新規契約がデメリットに見えるかもしれませんが、別の場所で一からやり直すよりも時間も労力も少なく再スタートができるからです。

新規契約となった場合、切り替えるタイミングは出来る限りあなたの希望に合わせて行ってもらえます。
通常は、解約する前借主がいつ引き渡してくれるかによって、新借主は借りたくても前借主の都合に合わせて待つしかありません。
しかし現在の契約者はあなたなので、あなたの都合のいいタイミングで今の契約を終了し、新しい契約をスタートすることが可能です。
たとえば、『撮影スタジオ兼オフィス』の契約を今月末で終了して、来月1日から新規業態で契約するなどです。

新しい借主がいたら、すぐに契約の切り替えができるかも

解約予告は3ヶ月や6ヶ月と賃貸借契約に定めています。
通常の流れは、解約予告を入れてから、3ヶ月や6ヶ月の予告期間を経過した後に、貸室を引き渡して契約期間が終了します。

さて、今から超重要なポイントを伝えます。

解約予告を入れていた予告期間中に、新しい借主がすぐに借りたいと希望して、今の借主もすぐに引き渡す(契約を終了する)ことを了承し、貸主が契約の切り替えを承諾してくれた場合、貸主と新借主が契約し、今の借主が貸室を引き渡せば、予告期間の経過を待たずに現在の契約を即終了することができます。

これは、予告期間なしで、契約を終了することができる必殺技です。

今回の業態変更の場合は、今の借主と新借主が同一人物なので、前借主の契約が終了した翌日から新借主の契約が開始する必要があります。
少し期間を空けたいと希望してしまうと通常の解約となり、予告期間の経過を待つことになり、室内を原状回復して一旦引き渡しを行い、改めて引き渡しを受けることになります。
たった数日間のために、予告期間の経過を待つのはロスが多すぎます。
貸室を明け渡せる状態にして引渡すということは、設備や造作の撤去もしなければなりません。
そんなもったいないことできないですよね。
なので、今の契約を終了させ、翌日から新契約開始という方法がお得なやり方になります。

家賃の支払いを少なく済ませる必殺技

この必殺技は、今回の業態変更のパターンに限らず使える方法です。
たとえば、お店を閉めようと思ったら、手順に沿って賃貸借契約を終了します。
この方法が上手く働くと、解約を早める家賃の支払いを少なく済ませることができます。

解約予告を入れると、すぐに管理会社が次の入居者募集を始めます。
あなたが予告期間を経て、契約機終了までしっかり営業したいという話なら別ですが、次の借主がいたらいつ商売を終了しても構わないと思っている場合、その旨を管理会社に伝えて下さい。

そして営業中の内見にも協力して、申込が入ったとします。
その申込者がすぐに引渡しを希望した時にあなたがOKを出せば、貸主は新借主と契約します。
新借主の契約開始日があなたの解約予告期間内であっても、あなたが約束通り引渡しを行えば、予告期間の経過を待たず賃貸借契約は終了できます。

聞くと簡単に思えるかもしれませんが、これは全てが順調にいった場合です。

飲食店などは厨房や内装があり、居抜きで解約・引渡しOKという場合はうまくいく可能性が高くなります。
スケルトンに戻さなくてはならない場合、スケルトンは新しい借主が決まりづらく、ゼロから内装プランを練るため、できる限り時間がほしいし、場合よっては契約も遅めがいいと考えるので、すぐに引渡ししてほしいという希望は入りにくいでしょう。

物販店・サービス店などの場合、内装は借主が行うものなので、貸室内の設備等を簡単に撤去できる状態であればうまくいくかもしれません。
しかし事務所などの場合、退去した翌日から借りたいという話はほぼないでしょう。
事務所の場合、まず貸主の方でクロスの貼り替えなど原状回復工事を済ませてもらい、その上で引渡し行うのが通常だからです。

店舗でも事務所でも、よほどの好立地でない限り、前借主からすぐに引渡しを受けたいと希望するほど急いで借りたい理由はほとんどありません。
そう考えると、すごい必殺技ではありますが、状況が整わない限り使えない技なので出番は少ないでしょう。

そして、こういった方法をスマートに進めてくれるかどうか、管理会社・不動産会社の営業の腕もあります。
滅多にあることではないので、店舗の扱いが不慣れな営業の場合、手続きに手こずる場合も考えられます。
これらも含め、全ての状況が整わないと簡単には進まないことだと認識しておいた方が、依頼する側としてもストレスが少なく済むでしょう。

以上、今回のテーマ、業態変更が認められた場合でも新規契約になる場合があるということ。
そして、業態変更でも解約でも、次の新しい借り手にスムーズに切り替えが行われると、解約予告期間を待たずに契約を即終了できるかもしれないということでした。

今は商売の内容を変えようと考えていなくても、いつかそんなことがふと頭をよぎった時は、今回のテーマを思い出して頂ければと思います。

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