貸店舗の賃貸借契約 いざ、フリーレントを交渉してみよう!交渉のタイミングやコツは?
『フリーレント』は、交渉次第で契約スタート時につけてもらえるかもしれない条件です。
契約期間がスタートし、借りている状況ではあるものの、大家さんへの支払いが発生しない期間。
その支払いがない期間を『フリーレント期間』と言います。
この『フリーレント』、はじめから『フリーレント』付きでテナント募集している貸店舗が稀にありますが、当たり前についているものではありません。
いつどうやって交渉して、OKをもらうのか?
今回はこの『フリーレント』について考えてみましょう!
オープンまでの工事期間は結構長い
出店しようと思える貸店舗を見つけた!
申し込みをして、審査OKとなると契約です。
契約が済むと、いよいよ店舗内の工事にかかります。
オープンに向けて店舗の内装や外装の工事期間は結構かかります。
スケルトンからの工事の場合、契約が締結し鍵を引き渡しを受けてからオープンまで、手際よく進めても最低で1ヶ月はかかるでしょう。
プラン作りに難航したり、工事業者さんが立て込んでいたり、工事でトラブルが発生などがあったり、そこそこの広さもあれば、1ヶ月半、2ヶ月、3ヶ月・・・とかかってしまいます。
オープンして商売が始められば利益がでますが、契約後から工事期間、オープンまでは無収入。
無収入であるにもかかわらず、契約はスタートしているので家賃の支払いは発生。
無収入だからと未払いで済むものではありません。
そんなことをしたら、あっという間に家賃の滞納者になってしまいます。
契約時は、そういった無収入の期間(工事期間)の家賃も含めて、開店資金を計算し、準備・調達します。
とはいえ、できれば無収入の期間の支払いはキツイ。
そこでそれを少しでも楽にするための方法として『フリーレント』という手段があります。
フリーレントを交渉するタイミング
無収入の工事期間の家賃の支払いをできるだけ少なく抑えたい時に交渉するフリーレントですが、これはいつのタイミングで交渉した方がいいのか。
フリーレントの交渉期間は、申込の審査結果が出る前までです。
早ければ早い方がよいのですが、具体的には、お店を借りたいと入居申込書を提出する時から、審査結果が出る前までに交渉します。
交渉は受ける側の大家さんにとって良い話ではありません。
聞きたくない話でも聞かなければならない話なら、早く聞いてしまいたいもの。
なので、相手にとって良い話ではなければ、早めに伝えてしまった方が良いでしょう。
後出しで交渉を入れたりしたら、なぜ今頃そんな事を言い出すのかと印象が悪くなってしまいます。
申込時に工事プランがほぼ出来ていて、どのくらいの工事期間がかかるのかわかっていれば、申込時または申し込み後すぐに交渉条件として添えてもよいのですが、プランが何も決まっていない段階では、工事期間が実際にどのくらいかかるのか検討がつきません。
とにかく早く交渉を始めないという気持ちで「フリーレントをお願いしたいのですか。」と伝えたら・・・。
「そうですか。どの程度ですか?」
と質問されしまいます。
しかし工事のプランが出来てないので答えられません。
そこで、何か言わないとと思い、とりあえず「・・・1ヶ月。」と伝えたとしても、実際は1.5ヶ月の工事期間だったりしたら?
せっかく交渉するのに、きちんと希望を伝えられてないことになってしまいます。
だからといって、交渉するのはタダだし、もしくはダメもとだからと「(じゃぁ)3ヶ月!」と多めに言ってもいけません。
貸す側の大家さんも管理会社も、経験からだいたいの工事期間はつかんでいます。
「3ヶ月かかる工事なので、フリーレント3ヶ月を希望します」
と聞けば『結構大規模な工事だな』とすぐに想像します。
それなのに、借りるスペースがもし10坪程度だったら?
『本当にそれは工事期間なのか?』と疑われてしまいます。
工事期間としてそれだけかかるのでフリーレントがほしいと伝えているので、間違っても工事を1ヶ月で済ませて、2ヶ月目にお店をオープンするなんてことはできません。
大家さんはあなたがオープンするお店のファン第一号になってくれる可能性大の存在です。
飲食店などであれば、地域密着で人気のお店を目指すはず。
お店のある物件に大家さんが住んでいるなら、プレオープンに大家さんご家族を招待して、その後大家さんからご近所や知人に宣伝してもらうというのは大変な強みになります。
お店のオープンは重要なイベントです。
実は、フリーレント期間中にオープンしていたなんて、大家さんからの信用も応援も失い、お店を宣伝する貴重なキッカケも失ってしまいます。
また、工事に入る前には、工程表や工事内容がわかる書類などの提出を求められることが多々あります。
多少の前後はある理解頂けるので、出来る限り正確な数字での交渉が大切です。
誠意をもって交渉すること
フリーレントは借主にとって家賃を支払わずに済むありがたい期間ですが、大家さんにとっては、毎月支払っているローンの返済があります。
ずっと空室期間が続いていたところ、ようやく入った申し込みなので早く収入がほしいところ。
そこをさらに待ってもらうという交渉ですなので、大家さんにとって申し込みが入って喜ぶのもつかの間、さてどうしようと悩む材料になります。
それを考えたら、誠意をもって本当に必要な期間を伝え、フリーレントを認めてもらえるか検討してもらうべきでしょう。
ちなみに、フリーレントの希望を出しても必ず通るものと思ってはいけません。
募集条件とは別に、追加して希望する条件なので、1ヶ月を希望しても全く認められない場合もありますし、2週間だけと希望通りにはならないものの、一部は認められるということもあります。
気になるお店を見つけたら、行動は一気に加速で
内見1回目で「このお店で行こう」と思ったら、2回目の内見時には工事業者に同行してもらい、一緒に現地を見ながらお店のイメージを伝えて、すぐに工事プランと見積りを作成してもらいます。
他の人に申し込みされてしまいそうな好条件のお店だった場合、工事の打ち合わせをしようと思って次の内見の日程を調整しているうちに申し込みが入り、その人で決まってしまう可能性があります。
インターネットなどでお店探しをして、気になるお店を見つけたら不動産会社に連絡を取り内見すると思いますが、見つけた瞬間からは一気に加速して行動しなければなりません。
✔ 1日も早く内見して、出店するか早く決断して申し込みをして、新しい借主の候補として手を挙げる。
✔ その合間に工事の打ち合わせをしてプランを立てつつ、工事金額が予算に収まるか検討する。
✔ 予算以上の見積りが出た場合、工事内容を変更し見積りを削れる部分があるか、速やかに工事プランを見直す。
✔ 工事内容が削れず、どうしても予算オーバーになる場合、追加資金の調達を検討する。
✔ どこからも資金が捻出できないと諦めるか、融資を受ける方向に進むかどうかを検討する。
こういった動きを一気にする必要があるので、気になるお店が見つかってから内装業者を探そうと思っていると間に合いません。
お店探しと同時に、工事業者探しも進めておきましょう。
ちなみに、上記のような流れ①は絶対ではありません。
②内見後、申し込みの前に先に工事の見積りを取って、予算を調整できそうだと見込みがついてから申し込みをするという人もいます。
①申し込みを先に入れてから工事の見積りを取る、②工事の見積りを取ってから申し込みをする、どちらでも構いませんが、人気の物件の場合、②の動きをしているうちに他からの申し込みが入りその人で決まってしまったというリスクがあります。
いざとなったら申し込みを辞退する手段はあるので、①の動きの方がおすすめです。
そうすれば、お店を借りたいという希望者の候補に入れるので、②の動きでようやく申し込みを入れたら、既に決まってしまい募集終了になってしまった・・・という事態は避けられます。
ライバルが多い人気の物件での交渉は不利
ところでフリーレントは、どの物件でも交渉できるとは限りません。
交渉できるとすれば、募集が出ている物件への申込者(ライバル)がいない場合だと思った方がいいでしょう。
人気のエリア・立地の物件、相場より安いなどの好条件の物件などは、手を挙げた者勝ち。
早い者勝ちとなる場合があります。
入った申し込みの内容を大家さんが見て、すぐに「貸します」と即日で決定してしまう場合があります。
タッチの差で、問い合わせると「決まってしまいました」と言われることはよくあります。
貸店舗は、必ず早い者勝ちというわけではありません。
「今月いっぱい申し込みを受け付けます」とか「しばらくの期間申し込みを受け付けます」と一定の申し込み受付期間がある場合もあります。
そういう時は申し込みをいくつも受け付けて同時審査となります。
タッチの差がないのはありがたいのですが、同時に申し込みを受け付けている場合、その中で誰が選ばれるかは申込者の内容が左右します。
お伝えした通り、大家さんとしては早く賃料収入を得てローンの返済に充てたいと考えています。
そんな中で申し込みが入った時に選ばれやすい人は、
1.すぐに借りてくれる人
2.条件通りに借りてくれる人
3.商売の内容が大家さんにとって希望の業種の人
こういった人になるでしょう。
1.はすぐにローンの返済に充てられるので非常にありがたい申込です。
2.は想定通りに賃貸経営ができるので、こちらもありがたい申込です。
3.は、1.2.と少し違います。
ローンの返済や想定の賃貸経営をしたいのはもちろんですが、建物のイメージや維持・管理等を考えて、こういった業種の人に借りてもらえると嬉しいという大家さんの希望になります。
大家さんが、たとえばできれば医療関係に入居してほしいと思っている場合、他の候補が「すぐに借りる」「条件通りでいい」と言っても、同時に医療関係からの申し込みがあればそちらを選択する場合があります。
大切な資産である建物のイメージ、周辺や商店街の活性化につながるような業種の出店など、大家さんとしてこうなったらいいな、という理想やこだわりがあります。
ローンの返済ももちろん重要ですが、それと同等に希望する業種への期待や思い入れが強いほど、同時に申し込みが入った時に、3を選ぶという場合があるのです。
大家さんが求めるところ、最終的な優先順位が何であるかは、申し込みが入ってみないとわかりません。
その中で少しでも「この人に貸したい」と思ってもらうのにすぐにできる簡単な方法は、交渉を入れないことです。
ライバルがいる場合、申し込み時に交渉条件をつけるほど不利になります。
そういった時は、フリーレントはもちろん、家賃などの値下げ交渉も控えた方がいいでしょう。
申し込み時の重要なポイント
申込書の記入欄には、家賃や管理費、保証金など記入する欄があります。
そこには、フリーレントを含め、あなたが希望する金額ではなく、大家さん側が提示している募集条件を記入することをおすすめします。
管理会社から、申込書に記載のないものは認めないと言われ、もし交渉材料があるならそれを記入するようにと求められたら、書かなければならないかもしれませんが、記入したらそれは正式な交渉となってしまいます。
ライバルがいる場合、ライバルの申込書と並べて、どちらに貸すかを検討する際、この人はこの交渉がついているからやめておこう、となる可能性があります。
申込書に希望の交渉条件を記入する場合、そういう状況があるかもしれないと想定し、覚悟を決めて書きましょう。
おすすめは、管理会社からの指示がなければ、申込書を記入する時に、募集条件の部分にも備考欄などにも交渉事項は書かないことです。
「フリーレント1ヶ月を希望したい」と思っていても、申込書には記入しません。
記入はしませんが、仲介してくれる不動産会社の営業に希望を伝えます。
下がらなければ絶対に借りない!と考えているなら希望の金額を記入するしかありません。
もし、フリーレントがついたらいいな、家賃や保証金が少しでも下がったらラッキーだな、という期待程度であれば、申込書には記入せず、営業に耳打ちする方がおすすめです。
仲介不動産の営業の手腕に任せる
フリーレントはその物件がどんな条件で募集が出されているか、好条件で早い者勝ちのような物件かそうでないか、状況によって交渉できる場合と交渉どころではない場合があります。
色々な物件を探して、見つけた瞬間に「あ!この物件いい!」とあなたが思えるのなら、それは誰もが感じている可能性があり、ライバルとの争奪戦になるかもしれません。
管理会社は現在何人の申込者がいるなど、教えてくれる場合もあれば、にごす場合もあります。
何人も申込者がいる場合は、大家さんと相談し、その中でこの人に1番貸したい、と思う人を選びます。
ここは譲れるけど、ここはなんとか交渉してほしいなど、仲介してくれる不動産会社の営業にあなたの希望・状況を正確に伝え、必要な書類の提出などはできる限り急いで対応するようにしましょう。
申込書に交渉材料を記入してなくても、営業にあなたの希望をしっかり伝えていれば、ライバルがいるかどうかも含め、交渉の余地があるかどうか探りを入れながら交渉を入れたり、引いてみたりして、管理会社とやり取りしてくれます。
審査の結果、もし交渉した材料が希望通りにならなかったとしても、「あなたに貸します!」と審査が通ったのなら、あなたは借りる権利を取得できたのです。
気に入った物件を借りられなければ意味がありません。
その第一歩をクリアできました!
お店をオープンするまでにやることは盛り沢山!
息つく間もないほどかもしれませんが、次のステップに向けてさらに加速です!