『居抜き』で解約したい!解約時の約束『スケルトン返し』は絶対か。

いよいよお店を閉めることを決断したあなた。
閉店までの手続きは楽しいものではありません。
しかし閉めると決めたからには、閉店の際、閉店後のあなたの負担が少しでも楽になるよう、もうひと踏ん張りしてみませんか。

「楽になるかもしれない」その一つ、契約書にうたわれている『スケルトン返し』
この契約内容は絶対か?
これを無しにできるか?

これが無しにできるなら、非常にありがたいですよね!

Contents

『スケルトン返し』は絶対か?

閉店=賃貸借契約を終了する場合、お店の内装をどうするか・・・。

賃貸借契約書に、解約時は『スケルトンで返すこと』とうたわれていたら、契約期間内に解体して、スケルトンに戻した上で引き渡さなければなりません。

オープンを目指してお店づくりした時の内装工事代が、どれだけ高額だった事などは関係なしです。
そのように決めて契約しているので、解約する際には解体費用をかけて壊さなければなりません。

できれば解体せず『居抜き』で解約できないか、そんなことが頭をよぎりませんか?

※『居抜き』とは、厨房設備や内装などの造作を残したまま解約・退去すること

ジョー

その通り。
契約は絶対なので、内容を勝手に変更することできません。

サニー

契約は絶対というのはわかってるわよ。
でも、話し合いの余地ってないものなの?

『居抜き』での退去を交渉してみたい

解体せずに『居抜き』で解約したい。
そんなこと可能なのでしょうか。

ジョー

契約書は絶対です。

サニー

だから、わかってるわよ。

ジョー

ですが、契約者同士が話し合い、その内容に承諾すれば、決めたことを変更することは可能だと思います。
ただし両者が納得・承諾しなければならないので、容易ではありません。

かすかな望みかもしれませんが、契約書上は『スケルトン返し』となっていても、ちょっとストップ!
解体する前に、交渉・相談してみてはいかがでしょうか。

絶対にうまくいくかはわかりません。
しかし、解体するまでにまだ時間があります。
交渉しない手はありません。

その際、貸主に直接交渉・相談することが考えらえます。
しかし、貸主が管理を依頼している不動産会社を通す方がうまくいく場合もあります。

サニー

ダメもとでも、やらなきゃ損よね!

どちらがいいのか?
なかなか判断が難しいところ。

では、どちらに交渉した方がいいのか比較してみましょう。

貸主に直接交渉した場合

有効なパターン

貸主の希望が『空室期間をできる限り短くしたいと望んでいる場合』
この場合、貸主に直接交渉は有効です。

なぜなら、スケルトンにせずに『居抜き』で募集した方が、次の借り手がすぐ見つかる可能性が高いからです。
新しい借主としては、工事代を安く済ませ、初期費用にかかる分をできるだけ少なくできる『居抜き』は非常に魅力的。

しかもつい最近まで営業していたお店ならなおのこと。
新しい借主は、ちょっとした手直しですぐにオープンできます。

「スケルトンにせず『居抜き』にすれば、すぐに新しい借り手がつくかも」このように貸主がイメージできれば、スケルトンでの引き渡しを考え直してくれるかもしれません。

交渉決裂の可能性が高いパターン

ただし、営業年数が長く『居抜き』にするにしては、設備も内装もボロボロ・・・。
いつ壊れるかわからない・・・という状況の場合、それならいっそ壊してほしいと思われる可能性が高くなります。

造作が残っている場合、引き渡する時やその後に旧借主と、または新借主と交渉が必要な上、トラブルが発生する場合があります。

例えば

・『居抜き』で引き渡しを受けた新しい借主が、いざ使用を開始したところすぐに壊れてしまい、撤去や撤去費用を貸主請求したいと言い出すケース。

・「造作を残していいと言われたから」と、造作以外(什器やゴミなど)も含めそのままの状態で退去し、「こんなものまで残していったのか!」なんていうケース。

・あとは「こんなところまで手を加えていたのか!」と気付き、退去した借主と敷金精算で揉めるケースなど。

退去した借主と敷金精算で揉めてしまうと、次の募集ができません。
いや、募集はできなくはありませんが、残っている造作の処理や処分について新しい借り手からの交渉の対応をしつつ、同時に以前の借主とトラブルのやり取りをしつつ、というのは貸主にとってストレス大で極力避けたいこと。

すんなり契約書通りに『スケルトン返し』をしてくれていれば、こんなストレスを貸主が受けることはないわけで・・・。
こんな思いをするくらいなら、いっそ綺麗に解体してもらえばよかったと、善意で『居抜き』を認めてくれた貸主が後悔し「今後は二度としない」と心に誓ってしまうこともなりかねません。

こんな風に過去の経験から、またははじめから貸主の意識に『トラブルは嫌』という気持ちが強い場合、『居抜き』での引き渡しは断られる可能性は非常に高くなります。

貸主はずっと貸し続けてきたので、『居抜き』に限らず、契約に関し過去に様々なトラブルを経験しています。
そういったイザコザにうんざりしてしまい、「もう面倒は嫌!」「契約内容は絶対厳守して!」となっている場合、交渉はかなり難航すると思います。

不動産会社を通した方がいい場合

有効なパターン

貸主からの信用が高く、管理を任せられている不動産会社(ここでで「管理会社」といいます)の場合、その管理会社から貸主に提案してもらうことで『スケルトン返し』を回避できる可能性があります。

なぜなら、管理会社から提案しているので「何かあったときは前面に出て対処しますよ。」と管理会社が約束してくれたようなものだからです。

貸主が借主と直接やりとりしてしまった場合、貸主の責任で自身が窓口となり、はじめから終わりまで処理しなければなりません。
それが、管理会社が提案してくれた場合「じゃぁ、そっちが窓口となってしっかりやってね。」と、面倒な手間・交渉事をそっくり任せることができます。

貸主にそういう提案ができる不動産会社は、その管理会社が店舗の扱いに慣れていること、貸店舗募集に自信があることが前提です。

交渉決裂の可能性が高いパターン

貸店舗の扱いに不慣れな管理会社の場合、貸主同様『契約内容は絶対厳守』です。
「契約書通りに『スケルトン返し』にして下さい。」とあっさり断られる可能性が高いです。

住宅の管理がメインの業務となっている管理会社などは、貸店舗の募集などは不得意である場合が多いです。
貸店舗の敷金精算も同じく不得意です。
ましてやスケルトンではなく『居抜き』で退去となると、どう処理したらいいかわからなくなってしまう場合もあります。

万が一、スケルトンでの引き渡しが変更になった場合、契約書にうたっていた内容を急きょ変更することになります。
貸主・借主両者の承諾を取りつつ、さらには新しい借主へも配慮しなければならなくなる。
なんていうことは、貸店舗に慣れていない管理会社にしたら非常にハードルが高すぎて、拒否反応が起こります。

なので『契約内容は絶対厳守』となります。
契約書にのっとって、その通りに進めようとします。

それがいけないのではありません。
本来それが当たり前で、スムーズに進めるために契約書で様々なことを定めています。
そして、こういうトラブルが起きてしまわないように「スケルトンにする」という項目も契約書に含めているのです。

逆に、契約書の内容通りではないことをお願いする方が無茶と言えば無茶です。
「無理を言ってるのはわかってますが、そこのところを何とか・・・・。」
と、無理を承知でお願いをしているのはこちらです。

でも、そこまでする借主の希望はわかります。
大切にしていたお店を泣く泣く手放すわけで、好きで解約するわけではないのですから。

どちらに交渉した方がいいか見抜くポイント

貸主に直接交渉するのと、管理会社を通す場合と、どちらがいいのか。

どちらも有効かもしれないし、難しいかもしれない・・・。
となると、どちらにお願いしたらいいのでしょう。

上記のどちらのパターンに当てはまるかを見抜くのはとても難しい。

一つだけヒントがあります。

あなたがお店を借りる時、どちらの状態で借りましたか?

スケルトンの状態で借りた場合

スケルトンの状態で借りていて、入居後にあなたが内装を造作しているとしたら、貸主・管理会社から「スケルトンにしてくれ。」と言われる可能性は高いでしょう。

おそらく、あなたの前の借主も、同様にスケルトンで借りています。
そして解約・退去時にはスケルトンに戻して貸主に引き渡しています。

その流れで、あなたはスケルトンで引き渡しを受けていると思います。
なので同様に「スケルトンにして下さい。」と言われるでしょう。

居ぬきの状態で借りた場合

もしあなたが『居抜き』で借りた場合、契約書上は『スケルトン返し』と記載されていたとしても、貸主・管理会社に交渉の余地がある可能性が高くなります。

この場合、あなたの前の借主はスケルトンせず貸主に引き渡しています。
あなたが貸室の利用を始めてから、しっかりとメンテナンスを行い、設備の状態が良い状態を保っている場合、前借主と同様に『居抜き』で引き渡せるかを相談できる可能性があります。

劣化と傷みが進んだお店の『居抜き』はあきらめるしかないのか

前述の通り、前借主から継続して使用されたことにより、貸室内の全てが傷み劣化が進行して、内装はボロボロ、設備もいつ壊れるかわからない、という状態になっている場合、貸主が『居抜き』を嫌がって「スケルトンにしてくれ。」と言われる可能性は非常に高いです。

『居抜き』で貸すけど、劣化が進むことを予想しているので「引き渡しはスケルトンにする」と契約書に定めて契約しているからです。

劣化が進み、それなりに傷みがあるお店の場合、やはりスケルトンにするしかないのか・・・。


こうなると、最終手段の奥の手を使うしかありません。
貸主も管理会社も難しい場合・・・。
最終手段は『外部の』不動産会社に相談してみることです。

管理会社とは関係ない不動産会社で構いません。

力になってもらえる可能性が高い 不動産会社

 ・新しい借り手との交渉や、引渡しの際や引き渡し後の貸主負担と借主負担の線引きができる。
 ・新しい契約者との契約内容を部分的に修正できる技量を持っている。
 ・状況に応じて随時柔軟に対応できる姿勢である。

こういった不動産会社が引き受けて対応してくれれば、劣化が進み判断が微妙なお店でも『居抜き』での引渡しを貸主に説得し、承諾を得てくれるかもしれません。

え?契約に関係ない不動産会社が間に入れるの?

はい、あなたからの依頼があれば『外部』の不動産会社でも入れます。

しかし、こういう場合、どの不動産会社でも対応できるわけではありません。
店舗を専門に扱っている不動産会社なら受けてくれる可能性が高いでしょう。

依頼してみようかなと思う不動産会社に連絡を入れて、状況を相談してみて下さい。

ただし『外部の』不動産会社が、貸主や管理会社に交渉するので、風当たりはとても強くなります。
『外部の』不動産会社が頑張って交渉するためには、あなたからの情報と信頼関係が重要です。

いざ引き受けたら、不動産会社の営業はあなたに代わって本気で交渉してくれます。

情報をきちんと提示しなかったり、軽くあしらったり、連絡がつかないことが続いたりすることのないように気を付けて。
最後の頼みの綱が外れてしまったら、あなたは契約書に従い、スケルトンにするためにお店を解体することになります。


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